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論 文 公 表 の ご 報 告


2021年11月15日

ブラックバスの弱点をついた駆除の有効性を実証した論文を発表


 (一社)水生生物保全協会(宮城県利府町)は,(公財) 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団(宮城県栗原市)と共著で,環境省東北地方環境事務所や宮城県の支援を受けて実施しているオオクチバスの防除活動について,繁殖期のさまざまな段階でオオクチバスを駆除する伊豆沼方式により,オオクチバスが減少し,魚類相が回復し始めたことを示す論文にまとめ,外来生物防除を取り扱う学術誌「Management of Biological Invasions」に論文を発表しました.この論文には,シナイモツゴ郷の会・宮城県水産技術総合センター・東北工業大学の研究者も共著に名を連ねています.

 オオクチバスは国内や世界各地に移入され,在来の生態系に深刻な影響を及ぼす外来生物として各地で問題になっています.宮城県北部に位置する伊豆沼・内沼では,沼の生態系に深刻な影響を及ぼしたオオクチバスに対し,2001年より駆除活動を行ってきました.最初の3年間の活動では成果が出ず,オオクチバスの増加を防ぐことができませんでした.そこで2004年から,オオクチバスの弱点である繁殖に焦点をあてた駆除活動に切り替えた結果,オオクチバスが年々減少し,2009年には沼の淡水魚が回復し始めました(図1).


図1 伊豆沼・内沼におけるブラックバス(左)と他の魚類(右)の生息状況の変化.繁殖抑制を開始した2004年よりオオクチバスが減少した(@).在来魚など他の魚類は,90年代後半にオオクチバスの食害により激減したが(A),バス駆除活動により2009年頃より急激に回復した(B).


 詳しく分析したところ,沼でのオオクチバスの繁殖を85%以上抑制できており,その結果,沼のオオクチバス全体が減少したことが確認できました.2004年からの活動は,ボランティアの協力を得ながら実施し(図2),「伊豆沼方式」として全国にPRしてきました.今回,この手法の有効性を科学的にも確認できたことは,同様の被害に悩む日本各地の水辺の生態系の保全活動に寄与すると期待されます.


図2 ボランティア団体バス・バスターズによる駆除活動の様子.人工産卵床によるオオクチバスの巣の駆除(左)と,三角網を用いた稚魚の駆除(右).

論文表題  Success in population control of the invasive largemouth bass Micropterus salmoides through removal at spawning sites in a Japanese shallow lake
著者 藤本泰文, 高橋清孝, 進藤健太郎, 藤原 健, 有田康一, 斉藤憲治, 嶋田哲郎
掲載誌 Management of Biological Invasions 12巻, pp. 997-1011(2021年11月15日発行)
論文へのアクセス https://doi.org/10.3391/mbi.2021.12.4.13


解 説


 ブラックバス(標準和名オオクチバス,学名=Micropterus salmoides) 写真上  北米原産で魚食性の大型淡水魚.スズキに近い仲間.ルアー釣りの対象として全国で盛んに放流された.生態系への悪影響が大きいため,生きた個体の飼育,譲渡,運搬,放流が法律(外来生物法)で禁止されているが,違法な放流が後を絶たない.写真は2021年9月30日の池干しで駆除した個体.

本件の問い合わせ先  (一社)水生生物保全協会
  TEL/FAX:  022-255-9275      





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