2021年6月30日
■ ブラックバス違法放流の疑いについての論文を発表
(一社)水生生物保全協会(宮城県利府町)は,経団連自然保護基金の助成を受け実施しているゼニタナゴの生息地を再生させるプロジェクトの成果として,ナマズのがっこう,(公財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団と共同で,池干しによる駆除後に突如大量に現れたブラックバス稚魚が,駆除後の違法放流に由来する疑いの強いことを数値で示す論文にまとめ,(公財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団が発行する学術誌「伊豆沼・内沼研究報告 15巻」に「宮城県伊豆沼・内沼集水域のため池で池干しによる駆除後に再び現れたオオクチバスMicropterus salmoidesはどこから来たのか?」と題して論文を発表しました.
私たちはかねてより,伊豆沼・内沼で,何者かにより放流されたブラックバスの食害によりいったん絶滅したゼニタナゴを復活させようと,バス駆除とゼニタナゴ生息地の復元を並行して進めてきました.その成果はようやく少しずつ現れてきて,最近では沼でゼニタナゴが見られるようになりました(2021年4月25日プレスリリース).沼でのゼニタナゴの復活を加速させるために,沼に流れ込む川の上流にあるため池でも,ナマズのがっこうが中心となって池干しによりバス駆除を進めてきました.これまで66ヶ所で池干しをし,50ヶ所以上で駆除に成功しています.ところが一部では再びブラックバスが現れることがあり,それが駆除の失敗によるのか,再び何者かが違法に放流したのかがよくわかりませんでした.
今回の論文では,池干し後1年8ヶ月後に突如現れた約7000尾のブラックバス稚魚が,池干しの捕り残しのせいなのか,1年前の違法放流のためなのか,それぞれの場合について大きさと尾数を見積り,どちらがよりありうるのか検討しました.
写真左は宮城県栗原市の照越ため池の池干しの状況.池の底まで排水し,念のため石灰を撒いている.2018年9月.写真右は池干し後1年8ヶ月後に突如現れたブラックバスの稚魚.2020年6月に投網で捕獲.この写真にほかに写っているものはアメリカザリガニとウシガエルだが,在来の生物は全くいない.
捕り残しと仮定した場合,全長35cmの成魚であれば8尾または17cmの0才魚であれば90尾弱で,底まで排水して石灰まで撒いた状況ではありえないと考えられました.池干し1年後の違法放流と仮定すると,全長38cm 程度を約5尾または22cm程度を約8尾で,少し頑張れば乗用車に積んで1人で運べる数です.このことから違法放流の疑いが濃厚となりました.だとすると,趣味のためには違法行為もいとわない自分勝手な行為のために,この場所でのゼニタナゴの復活が遠のいてしまったばかりか,このままでは下流の伊豆沼・内沼にも悪影響を及ぼし続けることになります.
■ 論文表題 宮城県伊豆沼・内沼集水域のため池で池干しによる駆除後に再び現れたオオクチバスMicropterus salmoidesはどこから来たのか?
■ 著者 斉藤憲治・三塚牧夫・麻山賢人・藤本泰文
■ 掲載誌 伊豆沼・内沼研究報告 15巻, pp. 107-120(2021年6月30日発行)
■ 論文へのアクセス https://doi.org/10.20745/izu.15.0_107
解 説
ブラックバス(標準和名オオクチバス,学名=Micropterus salmoides) 写真右 北米原産で魚食性の大型淡水魚.スズキに近い仲間.ルアー釣りの対象として全国で盛んに放流された.生態系への悪影響が大きいため,生きた個体の飼育,譲渡,運搬,放流が法律(外来生物法)で禁止されているが,違法な放流が後を絶たない.写真は2019 年の池干しで駆除した個体.
■ 本件の問い合わせ先 (一社)水生生物保全協会
TEL/FAX: 022-255-9275
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