2021年6月30日
■ ミズワラビの仲間の世界の北限記録を更新する論文を発表
(一社)水生生物保全協会(宮城県利府町)は,日本産のミズワラビの仲間の,ヒメミズワラビの自生地を宮城県松島町の水田で発見し,(公財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団が発行する学術誌「伊豆沼・内沼研究報告 15巻」に「ミズワラビ属Ceratopterisの世界の北限とみられる記録」と題して論文を発表しました.
ミズワラビの仲間は熱帯から亜熱帯にかけて多く見られますが,北半球の温帯域ではこれまで,山形県の白竜湖(北緯38.1度)が最北の自生地として知られてきました.松島町の自生地は北緯38.4度にあり,その記録を更新しました.松島町の自生地は宮城県唯一のもので,保全の対象となるものと思われます.
写真左は宮城県松島町におけるヒメミズワラビの自生地の水田.2019年10月撮影.写真右は自生が確認されたミズワラビ.冬を前にした10月初旬でも胞子葉がまだ出ていない.
■ 論文表題 ミズワラビ属Ceratopterisの世界の北限とみられる記録
■ 著者 斉藤憲治・速水裕樹
■ 掲載誌 伊豆沼・内沼研究報告 15巻, pp. 25-30(2021年6月30日発行)
■ 論文へのアクセス https://doi.org/10.20745/izu.15.0_25
解 説
ヒメミズワラビ(学名=Ceratopteris gaudichaudii Brongn. var. vulgaris Masuyama & Watano) ホウライシダ科
水田などの浅い水域に夏に育つ水生のシダ.秋になると胞子をばらまいたあと枯れる.この仲間としては最も北方に分布し,日本では沖縄から東北地方南部まで見られる.北日本では珍しい.山形県では絶滅危惧IA類に指定.国外では韓国南西部,中国(山東省以南),台湾,ネパールなどに見られる.近縁種はウオータースプライトまたはC-fernとして知られ,熱帯魚水槽のいろどりとして育てる水草として,食用として(東南アジアなど),また,高等植物のモデルとして科学研究に利用される.
■ 本件の問い合わせ先 (一社)水生生物保全協会
TEL/FAX: 022-255-9275
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