論 文 公 表 の ご 報 告


2021年4月25日

伊豆沼・内沼(宮城県)にゼニタナゴが帰ってきた!!

― 17年にわたる粘り強いブラックバス駆除活動の成果を示す論文を発表 ―


 (一社)水生生物保全協会(宮城県利府町)は,経団連自然保護基金の助成を受け実施しているゼニタナゴの生息地を再生させるプロジェクトの成果として,(公財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団と共著で,日本魚類学会が発行する学術誌「魚類学雑誌 68巻1号」に「伊豆沼・内沼におけるオオクチバス駆除活動によるゼニタナゴの復活」と題して論文を発表しました.

 伊豆沼・内沼では,何者かによりひそかに放流されたブラックバスの食害により,2000年(平成12年)ごろまでに,絶滅危惧種のゼニタナゴが絶滅しました.状況を憂いた人々が(公財)宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団を中心に結集し,2003年11に「ゼニタナゴ復元プロジェクト」が始動し,翌2004年春からブラックバス駆除活動が本格的に始まりました.
 500ha近くもある広い伊豆沼・内沼で,無数にいると思われるほどまん延したブラックバスの駆除は絶望的と思われました.しかし,最大で年間500万匹以上を駆除するなど,粘り強く活動を続けた結果,2015年に,上流のため池から流れ落ちたらしい少数のゼニタナゴが沼で見つかり,2020年には稚魚と,親の産卵行動も確認され,生活環が沼の中で完結,つまり復活していることがわかりました.



                左写真:沼で見つかったゼニタナゴ稚魚.
                右写真:カラスガイ(黒矢印)に卵を産もうとしているゼニタナゴの♀(白矢印).
                発表論文より抜粋.

 ゼニタナゴの復活に至るまでには,ブラックバスの駆除活動を単に長く続けただけでなく,流域全体を視野に入れたこと,効果的な駆除方法を開発したこと,研究機関や各種団体が連携したことがありました.伊豆沼・内沼での絶滅危惧種の復活は,全国で同様な自然再生に取り組む人々に希望と勇気を与えるものです.



ゼニタナゴの復活のための戦略(発表論文より).

論文表題  伊豆沼・内沼におけるオオクチバス駆除活動によるゼニタナゴの復活
著者 藤本泰文・高橋清孝・進東健太郎・斉藤憲治・嶋田哲郎
掲載誌 魚類学雑誌 68巻1号, pp. 61-66(2021年4月25日発行)



論文へのアクセス DOI: 10.11369/jji.21-002


解 説

 ゼニタナゴ(学名=Acheilognathus typus) 写真左  コイ科タナゴ亜科.5センチほどの淡水魚.関東・東北にある平野部の浅い沼,ため池,農業水路などにすむ日本固有種.ウロコがとても細かいという,他のタナゴにない特徴を持つ.繁殖期は秋で,卵をドブガイなど二枚貝に産み付けて守らせる.埋め立てや河川改修などにより激減し,そこへブラックバスの食害が重なり,絶滅寸前となる.宮城県絶滅危惧I類,環境省絶滅危惧IA類,国際自然保護連合(IUCN)絶滅危惧II類に指定.


 ブラックバス(標準和名オオクチバス,学名=Micropterus salmoides) 写真右  北米原産で魚食性の大型淡水魚.スズキに近い仲間.ルアー釣りの対象として全国で盛んに放流された.生態系への悪影響が大きいため,生きた個体の飼育,譲渡,運搬,放流が法律(外来生物法)で禁止されているが,違法な放流が後を絶たない.写真は2019 年の池干しで駆除した個体.

本件の問い合わせ先  (一社)水生生物保全協会
  TEL/FAX:  022-255-9275      





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